きんかん(金柑)は、日本人なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。のど飴の成分に含まれていることも多く、風邪にも良い、甘酸っぱい味のフルーツです。
初心者でも栽培しやすい果樹なので、庭木や、鉢植えがある家も多く、古くからなじみのあるフルーツとして親しまれています。
そこで今回は、きんかんの品種や栄養、保存方法や食べ方などについて詳しくご紹介します。
きんかんってどんなフルーツ?
きんかん(金柑)は、ミカン科キンカン属に分類されています。一粒10g前後と小さく、ほかの柑橘類と大きく違うのは、食用のメインが果肉ではなく皮であるという点。
丸ごと食べることができ、皮は甘くて果肉は酸味が強く、ほのかな苦みも持ち合わせた、一風変わったみかんの仲間です。
また、きんかんの甘露煮は正月のおせち料理の定番。富を象徴して「金冠」と掛けられ、より暮らしが豊かになるように、という願いが込められています。
金の柑橘という名前からも、金運を上げてくれる開運フルーツとしても有名です。
宮崎県、鹿児島県、熊本県、佐賀県など、主に九州地方などの暖かい場所で栽培されており、11月頃から3月頃まで出回り、1~3月頃が旬の時期となっています。
食用きんかんが伝わったのは船の漂流がきっかけ
きんかんの原産地は中国。日本には、14世紀に「丸きんかん」という品種が渡ってきたのが最初ですが、現在日本で栽培されている食用きんかんの多くは、江戸時代に中国船から静岡県に伝わったといわれている「寧波(ねいは)きんかん」という品種です。
1826年、日本の商人3人を長崎まで送る予定だった中国の商船が、暴風に襲われて船体が破損し、航路から外れて静岡県の近くに漂着。
静岡で停泊している時に、食べ物を提供する仕事を担当していた、柴田権左衛門という人物が、その商船に珍しい品種のきんかんがあるのを発見し、その実が従来のきんかんよりも丸くて大きく、とても風味があったため、船長に掛け合ってその実を分けてもらったのが始まりだといわれています。
そして、その種を庭に植えると質の良い実ができるようになり、それがやがて日本に根を下ろし、日本各地に栽培されるようになったのです。
きんかんの品種には何がある?
きんかんにはいくつか種類がありますが、生食できるものは、寧波(ねいは)きんかん、長きんかん、丸きんかん、プチマルなどです。
その中でも果実が大きく品質が良いのは寧波きんかんで、店頭で出回っているもののほとんどが寧波きんかんです。
寧波(ねいは)きんかん
別名ニンポウきんかん。円形~楕円形で重さは12~16gほど。皮が薄いので食べやすく、甘露煮やジャムとしても利用されています。
寒さや病害虫に強い品種で、育てやすいことから初心者が栽培するのにもおすすめの品種。流通しているきんかんもほとんどがこの品種です。
主に宮崎県や鹿児島県など暖かい地域で栽培され、完熟したものは甘くて風味も良好。宮崎県名産の「たまたまきんかん」などのブランドもこの品種です。
たまたまきんかん
日本一のきんかん産地、宮崎県が誇る完熟きんかんのブランドです。温室内の木でじっくり時間をかけて育て上げ、完熟させてから収穫。その中でも糖度16度以上で直径28mm以上の、高品質の選ばれた完熟きんかんのみに、「たまたま」という名前が与えられます。
さらに糖度18度以上で直径33mm以上の、最上級のものには「たまたまエクセレント」と名付けられます。
一般的なハウスきんかんは出荷のピーク時では1kg当たり1,500円前後で販売されるのに対し、「たまたま」は1kgで3,500円以上、「たまたまエクセレント」は1kg箱で5,000円以上で販売されることが多く、高級きんかんであるということがわかります。
たまたまきんかんは、大きくて甘く、生でそのまま食べるのに最適。たまたまエクセレントはさらに甘味が強く、マイルドな口当たりです。
長きんかん
長球形の果実で、枝にはほとんどトゲがなく、重さは10~12gほど。種子数が少なく生食用として栽培されています。
丸きんかん
加工および鑑賞用として利用されます。枝は分枝が多く、若い枝には刺があることがあります。晩秋から冬にかけて、球形で小さい6~8g程度の、黄色く熟した実を収穫します。
プチマル
2002年(平成14年)に品種登録された、農水省育成のタネなし品種です。
ごく小さなタネがあることもありますが、基本的にはタネがないため食べやすく、苦味も少ないのが魅力。加工する際にも便利で、子どもや女性に人気の品種です。
マメきんかん(観賞用)
小さい1gほどの果実で、観賞用です。特に小品盆栽に利用されることが多いです。
きんかんの効果効能!薬用としても使われてきたフルーツの力!
きんかんは、古くから咳止めやのどの痛みの抑止に効果があるとされ、金橘(きんきつ)という生薬名があり、薬用としても用いられてきました。
他にもさまざまな効能があり、主なものは以下の通り。
- 風邪予防、美肌効果・・・ビタミンC
- 血流を改善・・・ヘスペリジン
- 咳止め・・・シネフリン
- 整腸作用・・・食物繊維
- 丈夫な骨作り、リラックス効果・・・カルシウム
栄養価が高く、食物繊維もたっぷりでヘルシー。カロリーは100gあたり71kcalで、約8個分の量にあたります。
他にもβカロテンやビタミンEなども多く含み、皮ごと生で食べるきんかんは天然のビタミン剤そのもの。ビタミンを余すことなく摂取でき、機能性果実としての利用価値も高いフルーツなのです。
きんかんはビタミンCたっぷり!美容にも健康にも〇
きんかんに含まれるビタミンCは100g中49mgと豊富に含まれています。これはきんかん約8個ほどの量で、ビタミンCの1日摂取推奨量の約半日分を摂ることができます。
ビタミンCは潤いのある美肌に導き、抗酸化作用も期待できる美容には欠かせない成分。また、風邪を予防して、血管や骨を丈夫にし、ガン予防にも働きます。
美容にも健康にも良いきんかん。風邪予防としてもぜひ食べてみてください。
きんかんの皮に含まれるヘスペリジンは健康効果いっぱい!
きんかんの皮にはヘスペリジン(ビタミンP)という成分が多く含まれています。
みかん由来のフラボノイド、ポリフェノールの一種で、毛細血管の強化や血中コレステロール値の改善効果、血流改善効果、抗アレルギー作用、発ガン抑制作用など、たくさんの健康効果があることが発見されています。
ヘスペリジンは、柑橘類の皮や袋、スジなどに多く含まれています。そのため生で皮ごと食べるきんかんは、このヘスペリジンを摂取するのにとても適したフルーツなのです。
のどに優しいきんかん!シネフリンは咳止め効果が
のど飴にもよく配合されているきんかんエキスですが、きんかんの皮に含まれるシネフリンという成分には、気管支の筋肉弛緩作用の効果があり、それによる咳止めの効果があるとされています。
古くから風邪に効く民間薬として親しまれており、風邪のひきはじめに食べれば、のどの痛みや咳を緩和することができます。
便秘や下痢にも!きんかんには食物繊維いっぱい
きんかんには、糖質やコレステロールが体内へ取り込まれるのを防いでくれる、水溶性の食物繊維(ペクチン)が含まれています。
また、排便を促したり、整腸効果があるため、下痢や便秘などの予防や改善に役立ちます。お腹を壊しやすい方はきんかんを食べる習慣をつけてみましょう。
フルーツには珍しいカルシウムも
きんかんには、フルーツには珍しいカルシウムが含まれています。カルシウムは、丈夫な骨や歯を作ってくれるだけでなく、神経の緊張や興奮を鎮める働きもあるため、イライラ防止にもなるのです。
きんかんの香りでリラックス
きんかんの芳香成分には、たまったストレスを軽減させ、気持ちを落ち着かせるリラックス効果が期待できます。美味しく食べながら、心身の癒しにも優しく作用するきんかん。
ぜひ冬の時期になったら食べるのを習慣にしてみてください。
美味しいきんかんを選ぶポイント!食べ頃を見極めるには?
それでは、美味しいきんかんを選ぶポイントについてご紹介します。
- 少し赤みがかった濃いオレンジ色
- 皮に傷がなく、ツヤとハリがあるもの
- 手に持った時に重みを感じるもの
- ヘタが緑で枯れていないもの
上記のような金柑が良品とされています。ヘタの部分は緑でみずみずしいものが新鮮なため、茶色く枯れているものは避けましょう。また、持った時に軽く感じるものは、水分が抜けている可能性があります。
きんかんが腐るとどうなるの?
きんかんにカビが生えていたり、異臭がする場合は、明らかに腐っていることがわかりますが、そうでない場合は、
- 表面がベタベタしている
- 皮の表面が溶けている
- 皮がパサついている
といった状態になっているかどうか見てみましょう。
水分が抜けて皮がパサパサとしているときは、まだ食べることができますが、水分が抜け、味はかなり落ちています。皮の表面がベタついていたり溶けているときは腐りかけている場合が多く、中身までダメになっている可能性があるので食べないようにしましょう。
きんかんの保存方法!日持ちはどれくらい?
きんかんは、常温保存でも比較的長持ちするフルーツです。ただし、一般的な金柑と比べ、「たまたま」などの完熟のきんかんは、それほど日持ちがしないので早めに食べるようにしてください。
常温保存 | 約1~2週間 |
冷蔵保存 | 約2~4週間 |
冷凍保存 | 約2か月 |
乾燥保存 | 約1か月 |
常温保存のコツ
保存期間:約1~2週間
乾燥すると味が落ちるので、新聞紙などに包み、風通しの良い冷暗所で保管しましょう。完熟のきんかんは1週間ほどが日持ちの目安となります。
まだ熟しきっていないきんかんだと、2週間ほど日持ちさせることができます。
冷蔵保存のコツ
保存期間:約2~4週間
2週間以上日持ちさせたい場合は、冷蔵保存がおすすめです。乾燥しないようにビニール袋に入れて、冷蔵庫の野菜室に保存してください。
完熟したきんかんは2週間ほど、未熟なきんかんだと4週間ほど日持ちします。
冷凍保存のコツ
保存期間:約2か月
きんかんが大量にあって食べきれない場合は、余る分だけ冷凍保存するのもおすすめです。丸ごと軽く水洗いした後水気をとり、ジップロックなどの密閉できる袋に、厚みが均一になるよう平らに詰めて冷凍します。
冷凍したきんかんは、解凍してもベシャっとなり美味しく食べることはできないため、半解凍してシャーベットのようにして食べるか、ジャムや甘露煮など加工して食べるようにしてみましょう。
乾燥保存のコツ
保存期間:約1か月
きんかんを乾燥して、ドライきんかんにすると一か月ほど日持ちさせることができます。作り方は簡単。きんかんを輪切りにして種を取り除き、オーブンシートを敷いた天板に並べ、オーブンで100℃に設定し、約1時間ほど加熱するだけ。
様子を見ながら、乾燥が足りないときは加熱時間を増やしてください。
そのままドライフルーツとして食べたり、ヨーグルトに混ぜたり、パンやお菓子に入れたりと、使い方も色々あるのでおすすめです。
きんかんを美味しく食べよう!おすすめの食べ方や意外な食べ方紹介
きんかんは、さっと水で洗ったら、丸ごと丸かじりするのが一番おいいしい食べ方です。種も比較的柔らかいので気にならなければ、そのまま食べても大丈夫です。
他にも、定番の甘露煮から、スイーツ、サラダにしたりと、色々な食べ方があるのでご紹介します。
農薬が気になる方は
きんかんは皮ごと食べるため、農薬が気になることがあるかもしれません。
市場に流通しているきんかんは、産地での出荷前検査で残留が無いことを確認されているため、心配する必要はありませんが、それでも気になる方は、流水につけて念入りにこすり洗いするか、無農薬のきんかんを購入しましょう。
定番!きんかんの甘露煮
まずは、きんかんといえば甘露煮といわれるくらい定番のレシピをご紹介します。
用意するもの
- 金柑(300g)
- グラニュー糖(150g)
- 水
- 薄口しょうゆ(少々)
1.きんかんは洗ってヘタを取り、縦に浅く切り込みをいれる
2.きんかんを鍋に入れ、たっぷりの水を加えて火にかけ、沸騰したら弱火にして5分ほどゆがき、水に1時間ほどさらす(アクがでれば取り除き、中の種が取れれば竹串などで隙間から取り除く)
3.鍋にグラニュー糖、2のきんかん、かぶるくらいの水を入れ、落し蓋をして弱火で15分ほど煮る
4.水分が半量くらいに煮詰まり、軽くとろみがつくくらいまで煮たら、うすくちしょうゆをほんの少し加える
5.火を止め、そのまま冷ましてできあがり
甘露煮は、冷めるときに味が落ち着きます。固めに仕上げたいときは、煮る時間を10分ほどにしてください。きんかんから酸味がでるため、できれば鍋は耐酸性のあるホーローや土鍋などを使うのがおすすめです。
煮沸消毒した瓶などに入れれば、冷蔵庫保存で2週間ほど日持ちします。甘露煮を作るときにできた汁は、熱いお湯を注いでホットきんかんにして飲むことができます。
簡単!金柑のはちみつ漬け
甘露煮よりも簡単に作れるはちみつ漬けは、そのまま食べたり、お湯を注いでホットきんかんにして飲んだり、ヨーグルトにかけて食べるなど、色々楽しむことができます。
用意するもの
- きんかん(100g)
- はちみつ(50~80g)
1.きんかんは軽く水洗いして、種を竹串などで取り除きながら薄くスライス(輪切り)にする
2.保存容器にスライスしたきんかんを入れ、はちみつを注ぎ、冷蔵庫で1日置いてできあがり
冷蔵庫で1~2週間ほど日持ちします。はちみつの量はお好みで調節してください。生姜のすりおろしなどを一緒に入れると味が引き締まり、大人向けのはちみつ漬けになります。
風邪予防にもぴったりなので、きんかんがたくさんあるときはぜひ作ってみてください。
おもてなしに!きんかんとクリームチーズのディップ
きんかんなど柑橘類の酸味は、乳製品との相性も抜群です。ディップにしてクラッカーやバゲットなどと一緒に食べてみてください。
用意するもの
- クリームチーズ(50g)
- ミックスナッツ(30g)
- きんかん(4個)
- はちみつ(小さじ2)
- クラッカー(5~6枚)
1.きんかんは種を取って粗みじん切りし、ミックスナッツも粗く刻む
2.ボールにクリームチーズ、ミックスナッツ、きんかん、はちみつを入れて混ぜる
3.クラッカー(バゲットなどでもOK)に塗って完成
ナッツはアーモンドやカシューナッツ、くるみなど、なんでもOK。ちょっとしたパーティーなど、おもてなしにぴったりのレシピです。
おしゃれな一品!春菊と金柑のサラダ
春菊は、きんかんと同じ時期に出回る野菜です。緑とオレンジを組み合わせたサラダは鮮やかで、おしゃれな一品としてテーブルを華やかにしてくれるはずです。
用意するもの
- 春菊(100g)
- 金柑(3個)
- 塩(小さじ1/4)
- オレンジマーマレードジャム(大さじ1)
- 酢(大さじ1)
- オリーブオイル(大さじ1/2)
1.春菊はよく洗い、ざく切りにしてお皿に盛り付ける
2.きんかんを軽く水洗いして水けをとり、輪切りにして種を取る
3.クッキングシートの上に並べ、オーブンで片面4分くらいずつ焼き、軽く塩(分量外)を振る
4.塩、オレンジマーマレードジャム、酢、オリーブオイルの順に混ぜてドレッシングを作る
5.盛り付けた春菊の上にきんかんとドレッシングをかけてできあがり
春菊は茹でるより生で食べる方が、苦みを少なく感じ、苦手な方でも食べやすくなります。ほろ苦さのある大人なサラダを楽しんでください。
オレンジより簡単でかわいい!きんかんジェット
オランジェットはオレンジを使いますが、その代わりにきんかんを使って作ってみましょう。オレンジのように何回も茹でる手間がない分、簡単に作ることができます。
用意するもの
- 金柑(100g)
- 砂糖(50g)
- 水(適量)
- チョコレート(適量)
1.きんかんのヘタを取り、横半分に切って種を取り、3mmくらいの厚さにスライス(輪切り)する
2.鍋にスライスしたきんかんと砂糖を入れ、ひたひたにつかるくらいの水を入れて火にかけ、中火で煮詰める
3.きんかんが透明になり、柔らかくなったら火を止める
4.水気を切り、クッキングシートを敷いた天板に並べ、100℃のオーブンで50分ほど加熱する
5.ほどよく乾燥できたら取り出して、冷ます
6.チョコレートを溶かし、きんかんに半分つけ、クッキングシートの上で乾かしたらできあがり
きんかんは煮詰めすぎると形が崩れてしまうので注意してください。そのままラッピングしてプレゼントにしたり、ケーキのトッピングに使うのもかわいくておすすめです。
キンカンのホットミルク
冬の冷えた身体をぽかぽか温めてくれる、あたたかい飲み物のレシピです。寒い日やホッと一息つきたいときに。
用意するもの
- きんかん(2個)
- 牛乳(150ml)
- コンデンスミルク(適量)
1.きんかんを半分に切って種を取り、ミキサーで牛乳と混ぜる
2.1を鍋で弱火で温め、コンデンスミルクをお好みの量加えたらできあがり
牛乳の代わりに豆乳を使ったり、コンデンスミルクの代わりにハチミツを使っても美味しいです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?かわいい小ぶりの柑橘類、きんかん。
古くから親しまれていて、庭先に植えているお家では珍しくないかもしれませんが、あまり食べる機会がない方も多くいます。
ですが、栄養豊富でのどにも良く、冬の寒くて乾燥しやすい時期にぜひ食べて欲しいフルーツです。皮ごと食べることができるので、包丁を使ったりと食べるのに手間をかける必要がありません。
甘酸っぱくて少しほろ苦いのが特徴ですが、完熟のきんかんは酸っぱいのが苦手な方でも美味しく食べることができます。
サラダやスイーツなど、見栄えもいいのでぜひ色んな食べ方を楽しんでみてくださいね。